ジョン・サイパルが日本で写真活動するようになって、20年ぐらいになるだろうか。トーテムポール・フォトギャラリーのメンバーとしても10年以上になる。この場所を軸に生活圏内である東京都内を中心にスナップし、発表し続けている。彼が敬愛する写真家・荒木経惟のスナップをトレースするような作品もあったが、いまではジョンらしいともいえる東京を撮り続けている。
そんな彼の新刊『NEBRASCA, THE GOOD LIFE』(KEN BOOKS刊)は故郷であるアメリカのネブラスカ州で過ごした日々を写した作品集である。撮影したのが日本に来る以前の1990年代前半であり、キャリア初期の写真である。
個人的な感想になるが、ジョン・サイパルといえば東京を撮る人、というイメージが定着していたので、日本に来る前にアメリカでも撮っていたのか、というのが新鮮であったが、彼の出身地である訳だから撮っていてもおかしくないなと、当たり前のことに気付いた。それだけ東京で撮る写真家という強い印象がある。
写真を見る限り、その視線はすでにジョン独特のものであることが感じられる。若さもあってかどこか自由に楽しげに撮影している雰囲気が伝わってくる。あるいはアメリカ中西部に位置するネブラスカという土地で生きる当時のジョンにとって、カメラという装置が彼に自由であることを与えてくれたのかもしれない。
今もジョンは東京を拠点に写真を撮っている。アメリカ合衆国の真ん中に位置する場所から広い太平洋を渡って、東アジアにある小さな島国にいることを考えたとき、はるばる日本に来た動機が写真だと思うと、言語が越えたコミュニケーションが導いたといえるのかもしれない。
ちなみにジョンが当HPでも連載を持っているので、こちらも読んでいただきたいです。英語と日本語を併記しているが、日本語の文章がうまい。筆者よりも素晴らしい日本語を書くので、もう書くことをやめようかと思っています。
https://photoandculture-tokyo.com/list.php?s=03%3AExhibition+Report
- 『NEBRASCA, THE GOOD LIFE』
- 著者:ジョン・サイパル
- 発行:KEN BOOKS
- 価格:5,720円(税込)
ハードカバー上製本・296mm×188mm・110ページ・150部限定・写真78点- https://motion-gallery.net/projects/ken-books001
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