東京都写真美術館でTOPコレクション・セレンディビティ「日常のなかの予期せぬ素敵な発見」が開催される。
「セレンディピティ」という言葉がある。「セレンディップの三人の王子」というペルシアのおとぎ話を由来とするこの言葉には、「偶然と才気によって、予期しない発見をすること」という意味がある。
たとえば、こんな経験はないだろうか。偶然見つけたポストカードの写真に心が動いたり癒やされて、壁に貼っておいたり、大切に手帳にはさんでとっておいたり。あるいは、撮りためたたくさんの写真を見返してみたら、そのうちの2枚が撮影した場所や時間を越えてつながって、それまで気づかなかった何かを発見したり。それはまさしくセレンディピティの産物といえるだろう。
本展覧会では、約3万7千点に及ぶ当館の収蔵作品のなかから、セレンディピティをキーワードに、ありふれた日常の何気ない一瞬を撮影した作品などを見ていきながら、写真家たちに訪れたささやかな心の機微を探る。そしてまた、展覧会を見るという行為自体も、予期しない出来事との出会いにあふれた、セレンディピティな体験だ。
何年も続く制限された日々のなかで、様々な辛い出来事や不都合な出来事をたくさん経験してきた私たちだが、こうした写真家たちの視点をヒントに、セレンディピティの産物としての癒やしや心の豊かさを回復する種を見つけることができるかもしれない。
■しずかな視線、満たされる時間
日常というありふれた世界も、ちょっと視点を変えてみれば、様々な気づきにあふれている。ずっと前からすぐそこにあったのに気づかなかったことの発見は、まさしくセレンディピティな現象として、予期しないタイミングで私たちに訪れる。世界を切り取ることによって表現する写真というメディアを使って、作家たちが日常のなかのささやかな発見を捉えた作品を紹介する。
出品作家:吉野英理香、牛腸茂雄、北井一夫、島尾伸三、潮田登久子、今井智己
■窓外の風景、またはただそこにあるものを写すということ
ひとつのイメージを目の前にすると、私たちはそこに何かを見出し、そして見た人によってはとても大切な意味を持つことがある。このセクションでは、作家たちが「ただ、そこにあるものを写しとる」という行為によって得られたイメージが、それを鑑賞する人におこすセレンディピティについて考えてみる。
出品作家:鈴木のぞみ、佐内正史、葛西秀樹、エドワード・マイブリッジ、山崎博、浜田涼、相川勝
■ふたつの写真を編みなおす
撮影した場所や時間を越えて2つの写真が、写真家が全く予期していなかった何かの関係性によって結ばれることがある。それはまさしくセレンディピティの産物といえるだろう。写真は、編みなおされることにより、それぞれを別に見た時の意味に加えて、2つが並ぶことで生まれる意味を帯び、作品としての豊かさを増していく。
出品作家:奈良美智、齋藤陽道、中平卓馬、エリオット・アーウィット
■作品にまつわるセレンディピティ
優れた作品を生み出す作家たちも、みな私たちと同じように日々を生き、毎日を暮らしている。日常のなかでセレンディピティが訪れ、作品制作のきっかけになった作品や、鑑賞するうちに、私たちに思いがけない発見が訪れる作品などを紹介する。
出品作家:本城直季、井上佐由紀、石川直樹、ホンマタカシ、畠山直哉
- ■展示概要
- TOPコレクション セレンディビティ「日常のなかの予期せぬ素敵な発見」
- 会期:2023年4月7日(金)~7月9日(日)
- 時間:10:00〜18:00(木曜日・金曜日20:00まで)
休館日:毎週月曜日(ただし、5月1日は開館)
料金:一般 700(560)円/学生 560(440)円/中高生・65歳以上 350(280)円- ※( )は写真美術館の映画鑑賞券ご提示者、各種カード会員割引料金。
- ※小学生以下、都内在住・在学の中学生および障害者手帳をお持ちの方とその介護者(2名まで)、年間パスポートご提示者は無料。
【関連リンク】
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4530.html
会期 | 2023年4月7日(金)~7月9日(日) |
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会場名 | 東京都写真美術館 |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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