金村修がzineを作ったが、内容はコラージュである。雑誌や新聞からであろう選ばれたイメージや見出し、文章が切り取られ、誌面を埋め尽くすように密度の濃い中身になっている。
一見すると乱雑に思いつくままに切り貼りされているように見えるが、そこにある言葉に注目すると目を引っ張られ、前後左右にあるイメージが関連しているようにも思えてくる。むろん、それは錯覚に過ぎない。だが一度細部にあるなにものかに気を取られると、通底音のように響き続け、意識の片隅にあり続ける。
金村がこれまで発表してきた作品を踏まえると、今回のコラージュは突然変異で生まれたものでないことはわかる。6×7カメラのモノクロで撮影してきたのは街の雑踏を主とし、サービス版サイズのカラー写真を壁面に埋め尽くすインスタレーション、喧しいノイズを鳴らすムービーなど、限られた範囲内で過剰なまでの情報量を素材にしてきた。本作のコラージュもこれまでの作品に連なっており、金村修というアーティストの新たな面を表出されている。
巻末には作者自身によるテキストもあり、金村節ともいえる文体は健在だ。
- 金村修『Total Multimedia Life』
- レーベル:KILLER AGENT
- 発行年:2023年
- 180×130mm・中綴じソフトカバー
価格: 3,630円(税込)- 2023年恵比寿MEMにて開催中の金村修展「Can I Help Me?」に際し刊行。巻末には誘惑するファム・ファタールの恋愛遊戯から離脱してオートマティスムへと最終的に展開するユニークなコラージュ論。
- 「KILLER AGENT」は金村修によるレーベル。
- https://killer-agent.stores.jp
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。