MISATOの『The Passing Moment』は銀座4丁目交差点付近ですれ違った女性たちのモノクロポートレートで構成されている。データを見ると2017年から2019年に撮影されたものを中心にしている。2020年以降、街場のスナップを見るとき、マスク着用かどうかで時代背景を意識してしまう。
望遠レンズで撮影したのであろうか、カメラの存在を気にしていないであろうものや、正面から向き合って撮影しているものもある。表情も様々であり、顔とは同じパーツで構成されていながらこれほど違うものかと感心してしまう。
コロナ禍以前、多くの人の顔は晒されていることがあたり前であった。コロナ以降、マスクによって顔の下半分は隠され、目から上だけで認識するようになった。本書をめくりながら顔全体が見えるということに新鮮さを覚え、ある種のエロティシズムが人の顔に漂っていることを思ったとき、コロナ禍によって自分の価値感が揺さぶられていることに気付かされた。
顔とは人が人としてあることの意義を示していると、『The Passing Moment』から教えられたような気がした。
- MISATO『The Passing Moment』
- 発行年:2022年
- 私家版
- 上製・A4変型・158ページ・写真点数70点
定価:3000円(税別)
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2023年1月:東京銀座にあるアートギャラリー石でMISATO写真展「The Passing Moment」が開催
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