藤原更の『Melting Petals』(私家版)は芥子の花を対象にして撮影しているが、いわゆる花の形象はなく、赤を基調とした抽象画のような様相を呈している。
この作品は藤原が独自に考案した「剥離技法」によって表現されているという。これがどのような方法を用いているのか情報がないので詳らかにはできないが、本作で表象された芥子の花は、禁忌に触れたような毒々しさと同時に、蠱惑的な魅力が共存しているように感じられる。
芥子の花が阿片の原料であることは知られている。そうした知識からかイメージを通して退廃的な連想をしてしまう。果たしてこれが正解なのかどうかはわからない。もっとも写真の見方に正解などありはしないだろう。
見ることの愉楽を与える本書は、写真の中毒性へと誘う、ある意味危険な作品集ともいえる。本書をデザインした町口覚の手腕もこれに一役買っている。
- 藤原更『Melting Petals』
- 造本設計:町口 覚
寄稿:飯沢耕太郎、中西玲人
判型:297mm×210mm、64頁、無線綴じ上製本- 私家版
- 価格:7,700円(税込)
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