『岡上淑子・藤野一友の世界』(河出書房新社刊)は、2022年11月1日から2023年1月9日まで福岡美術館で開催された「藤野一友と岡上淑子」展の図録として刊行された。
ふたりはともに1928年生まれ、1951年23歳のときに知遇を得た。年表によるとこの年岡上は若山浅香を通して作曲家の武満徹を紹介され、その縁で瀧口修造と面識を得ている。ちなみに若山浅香はのちに武満と結婚した。
1957年、29歳のときに両者は結婚するが、この頃岡上はすでにコラージュ制作をやめていた。藤野は精力的に作品制作を行い、三島由起夫の書籍の装幀なども手掛けている。だが、1967年に離婚。この年藤野は病を患い、その後の活動にも影響し、1980年51歳で亡くなった。そして岡上は息子と母とともに故郷である高知へ戻った。
2000年に入ると、岡上の作品が再評価されはじめた。シュルレアリスムに影響を受けた岡上のコラージュ作品は、長い雌伏の期間を経て、多くの人の目に触れるようになった。藤野の作品も死後、省みられることが少なかったが、今回初めて両者の作品が並んで紹介されるに至った。
本作は図録であるため年表や資料なども含め、ふたりの履歴が一望できる仕上がりになっている。また岡上のコラージュ作品、藤野の幻想的な画風を並列することで、両者の共通点や差異が比較して見えてくるだろう。
- 『岡上淑子・藤野一友の世界』
- 出版社:河出書房新社
- 判型:B5変形・160ページ
- 発売日:2022年11月11日
- 価格:2,970円(税込)
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