竹下修平の『浄土作庭考』(東京綜合写真専門学校出版局刊)は、庭を主題にして、写真表現のありように果敢に挑み、実験に満ちた作品集である。
日本各地の庭を対象としているが、一枚の中に収めることなく、風景が断片となってそれがモザイク状になった構成がされている。庭の多くが寺院などの敷地内にあるもので、一度は耳にしたであろう庭園もある。
筆者は庭についてまったく知識はないが、日本の寺院にある庭には、その寺の宗派の思想が反映されているのであろう。つまり、その宗派の思想を元にした概念化した言葉がまずあり、その言葉が庭を造成する上で骨子となっているはずだ。
竹下はイメージ化された庭を解体する。つまり脱構築することによって、その庭にある思想を分解し、越えようとしている。写真装置を使いながら、フランスの哲学者であるジャック・デリダの言説を実践しているかのような印象を受けた。
そして、巻末に掲載された写真評論家である調文明によるエッセイの中で、〈「浄土作庭考」では(略)ところどころに間隙のようなものが存在する。それは「見えなかった」がゆえに「写らなかった」ことを示唆する。だが、そこには未だ見た者がいないはずの光景の断片が見えないままに漂っているとは言えないだろうか。〉と書いている。ここに写真の隙間を読み取る調文明の鋭さが示されている。
知的水準の高い本作は万人には受け入れ難いかもしれないが、本作に少しでも反応する感性がある者であれば、これほど愉楽的な写真はないと感じるのではないだろうか。
- 発行:東京綜合写真専門学校出版局
写真:竹下修平
担当:編集/デザイン/制作- 寸法:A3横(W420mm H297mm)
ページ数:56ページ
製本:並製本- 印刷/製本:サンエムカラー
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