宮本あずさ『ルスカスの花』(GRAF Publishers刊)は何度もページを手繰りたくなるような1冊だ。
撮影の舞台は青森県弘前市。作者の母親の故郷だという。宮本自身はプロフィールを見ると東京都町田市の生まれとある。「私はここで育っていない。冬の過ごし方を知らない」と書いているように、身近でありながらどこかよそよそしい感覚を覚えているようだ。
父親や母親の故郷とは、その子にとってどのような位置にあるのだろうか。物理的な距離で遠くの地に済む祖父や祖母は、孫である当人から見て心的な距離感はどれほどであろうか。
弘前の家、その周辺を見つめる眼差しから、他者である自分を拭いきれないような感覚がそこはかとなくあるように思える。
家とは何か。故郷とは何か。土地が人を縛るとはどういうことか。『ルスカスの花』を何度も見返しながら、そんな問い掛けに答えようとしているかのようだ。
そんな心象を反映しているかのような写真が巧みに並び、一編の私小説のような趣きがある。編集・大田通貴、デザイン・加藤勝也という蒼穹舎で優れた仕事を残す彼らとの相性もよく、息のあった形に仕上がっている。
- 宮本あずさ 写真集
『ルスカスの花 』
B5変形 / 上製本 / 写真51点 / 74頁 / 限定200部
2022年9月20日発行
3,800円(税込)
協力 大田通貴
装幀 加藤勝也
翻訳者 タラクセン ピーター
発行所 GRAF Publishers
発行人 本山周平
印刷・製本 株式会社サンエムカラー
【関連リンク】
https://graf-publishers.com/2022/08/29/【新刊のお知らせ】『ルスカスの花』宮本あずさ/
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