吉川直哉の『はっぴぃドッグ』は、タイトルが示すように、写真家・吉川の家にやってきた犬・リキとの日々を記録したアルバムである。
リキが吉川家にやってきたのは2020年1月。その数ヶ月後、コロナウイルスによるパンデミックに世界が覆われ、今も変わらず続いている。そうした中で、吉川家に迎えられたリキとの日々が綴られている。スマートフォンで撮影した9,387カットから770枚を選び、そこからプリントを制作。3ヶ月をかけて編集したという。
一見、何気ない飼い犬との生活が淡々と続いているように見えるが、コロナ禍という未曾有の状況に陥り、あらゆる階層で分断が広がる現在の状況において、動物とのふれあう光景を見ると、ひとつの希望があるように思えてくる。
吉川の撮る写真は一見プロ特有の撮り方ではなく、スマートフォンということもあってかアマチュアのような感触があるが、愛犬との日々というテーマだからこそ、誰もが持っているスマートフォンのカメラという機器であることが望ましい。テーマとメディアが幸福な形で融合した作品集といえる。そして、さり気なく時代性が反映されており、ここに写真家のスタンスが示されているように伺える。
- 吉川直哉 作品集「はっぴぃドッグ」
- A5サイズ、140頁
- 作品113点と日英併記エッセイ収録
- 2022年10月刊
- 升田 学:構成・デザイン
- 限定300部
- 価格2,970円(税込)
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