タリオンギャラリーで、石川卓磨、新津保建秀、松浦寿夫、松平莉奈による展覧会「それを故郷とせよ(手が届く)」を開催する。
石川卓磨は、写真や映像における事実と虚構、記録と表現の狭間にある、メディアそのものが孕む批評性を捉えながら制作し、作品化してきた。
連続写真を一コマのフレームとして繋いだ映像作品や、映画のワンシーンや絵画の構図を想起させる写真作品など、そこに写し出されたものの様々な読み解きを呼び起こす。
新津保建秀もまたポートレイトや風景に対する新たな解釈によって表現をおこなう写真家であり、写真や映像の中に往還する記憶や複数の時間軸を留めるシリーズなどを近年は発表している。
写真家としてのキャリアと並行してあらためて絵画やドローイングを学び直すなど、複数的な身体性を介して場所の立ち現れに関わる制作手法を展開している。
松浦寿夫は近代主義的な美術史の言説を検証しながら、絵画でしか表現しえない感覚の論理を追求して制作を行ってきた。これまでに「庭」や「気象」などを題材として、さまざまな筆触や色彩が干渉し合い積み重なっていく過程から、局所的かつ可変的なイメージの連なりを提示し、単数化を免れた平面のコンディションを包摂した絵画を描いている。
日本画の領域で培われた技術や画材を咀嚼しながら、松平莉奈は他者について想像することをひとつの主題として、人物などを中心とする具象画を描いてきた。昨年からは韓国で漢字に装飾が加えられた文字絵と呼ばれる民画を学ぶなかで、塗り込められることで速度を失った線について思考を深め、描線が生む時間の感覚に焦点を合わせて制作を行っている。
本展では、眼と手のはたらきが隠喩やテクノロジーとして、主体に内面化されコミュニカティブな機構に絡めとられる現在の状況を前提としながら、絵画や写真などの制作過程において不可避的に直面する像と実体、眼差しと現れ、記憶と現前などのずれやせめぎ合いの帰結としての美術を提示する。
眼と手による具体的相克としての制作から、多様なイメージや歴史に接続することも切断することもできる主体のバリエーションの条件を問い直す。」
- ■展示概要
- 石川卓磨、新津保建秀、松浦寿夫、松平莉奈「それを故郷とせよ(手が届く)」
会期:2022年9月29日(土)〜10月27日(日)- 会場:TALION GALLERY
会場時間:11:00〜19:00- 休廊日:月曜日、火曜日、祝日
【写真家プロフィール】
石川卓磨(いしかわ・たくま)
1979年千葉県生まれ。2004年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース卒業。
近年の主な個展に「小説の中の私」TALION GALLERY (2019/東京)、「教えと伝わり」TALION GALLERY (2016/東京)、「真空を含む」 国際芸術センター青森 (2016/青森)、「イーサン・ハントのフラッシュバック」TALION GALLERY(2014/東京) 、「世界と孤独 vol.2 石川卓磨」美術画廊 X (2012/東京)など。近年の主なグループ展に「部屋と庭 隔たりの形式」武蔵野美術大学美術館 展示室1(2020/東京),「雲をつかむできごと」switch point (2018/東京)、「犬死か否か」TALION GALLERY (2017/東京)、「第9回恵比寿映像祭」東京都写真美術館 (2017/東京) 、「カメラのみぞ知る」Yumiko Chiba Associates (2015/東京)など。
新津保建秀(しんつぼ・けんしゅう)
1968年東京都生まれ。 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。
近年の主な個展に「往還の風景」ART DRUG CENTER (2022/宮城)、「Liquid _Turpentine」遊工房 (2015/東京)、「磯谷博史 + 新津保建秀 Sequence」HAGISO / HAGIART (2015/東京)、「アーカイブ/余白/建築」ソニーイメージングギャラリー銀座(2014/東京)、「風景+」ヒルサイドテラス(2012/東京)など。近年の主なグループ展に「景観観察研究会 八甲田大学校」国際芸術センター青森 (2022/青森)、「さいたま国際芸術祭 2020」(2020/埼玉)、「9 posters」TALION GALLERY (2020/東京)、「Tokyo Indipendent 2019」東京藝術大学陳列館 (2019/東京)、「本を、つくってみた ―アーティストブックの制作と展示―」Nadiff a/p/a/r/t (2017/東京)など。
松浦寿夫(まつうら・ひさお)
1954年東京都生まれ。1988年東京大学大学院博士課程満期退学。多摩美術大学絵画科客員教授。
近年の主な個展にギャラリー 21yo-j (2020/東京)、2kw Gallery (2018/滋賀)、ガレリア・フィナルテ (2016/愛知)、なびす画廊(2016/東京)、ギャラリー分室 (2015/東京)など。近年の主なグループ展に「水彩考」東京アートミュージアム(2021/東京)、「岡崎乾二郎&松浦寿夫展」ガレリア・フィナルテ (2021/愛知)、「メイド・イン・フチュウ 公開制作の20 年」府中市美術館(2020/東京)、「Heterotopia」東京都美術館 (2019/東京)、「Physica」表参道画廊 (2018/東京)、「共同体について」URANO(2018/東京)、「絵画の体験を考える」Art Trace Gallery (2016/東京)など。
松平莉奈(まつだいら・りな)
1989年兵庫県生まれ。2012年京都市立芸術大学美術学部美術科日本画専攻卒業。2014年京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻日本画修了。
近年の主な個展に「すべての毒を飲む」The Terminal KYOTO (2021/京都)、「うつしのならひ 絵描きとデジタルアーカイブ」ロームシアター京都 (2020/京都)、「悪報をみる―『日本霊異記』を絵画化する―」KAHO GALLERY (2018/京都)、「insider-out」第一生命ギャラリー (2017/東京)、「未だ見ぬ熱帯」ギャラリーモーニング (2014/京都)など。近年の主なグループ展に「Slow Culture」京都市立芸術大学ギャラリー @KCUA (2021/京都)、ないじぇる芸術共創ラボ展「時の束を披く―古典籍からうまれるアートと翻訳―」国文学研究資料館 (2021/東京)、「景聴園×今昔館 描きひらく上方」大阪市立住まいのミュージアム (2020/大阪)、「原三溪没後80周年記念三溪園×横浜美術大学 三溪園と日本画の作家たち」三溪園 鶴翔閣 (2019/神奈川)、「第7回東山魁夷記念日経日本画大賞展」上野の森美術館 (2018/東京)など。
【関連リンク】
https://taliongallery.com/jp/press/80SYH.pdf
出展者 | 石川卓磨、新津保建秀、松浦寿夫、松平莉奈 |
---|---|
会期 | 2022年9月29日(土)〜10月27日(日) |
会場名 | TALION GALLERY |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。