公文健太郎の新刊『Nemurushima - The Sleeping Island』はドイツにあるKrhrer社から刊行された。海外のチームによって作られた写真集の舞台は香川県丸亀市にある離島・手島。
現在、人口がわずか十数人といわれる手島は観光地ではないが、かつては操船や造船技術において重要な役割を果たしてきたという。公文はこの島に2度訪れ、その後廃校となった校舎に寝泊まり、地元の人の家に招かれて交流し、ときには浜辺で夜を過ごして、無人島の気分を味わったという。
公文は「土地と人の営みのつながり」をテーマに写真を撮り続けているが、手島でも同様に、その場所の空気や人とのふれあいを通して、カメラを向けているのが伝わってくる。
冒頭、雨に煙ったフェリーの写真から始まり、何かを予感させるが、その後に続く写真には温もりに似た温かさがそこかしこに感じられた。夕陽の光をとらえた写真がいくつかあるが、このまなざしには慈しみをあるように感じたのは、筆者の思い過ごしだろうか。
手島に限らず、日本には住人が減り、過疎化が急速に進んでいる村や町は多い。その国のいち地域の光景をヨーロッパの人が感応したということは、普遍的な問題であり、光景なのかもしれない。それは同時に公文のテーマと視線もまた普遍性を兼ね備えているという証しであろう。彼の評価が日本という島国を越えて、海外でも大きく展開するような予感をさせる作品である。
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