フジフイルム スクエア写真歴史博物館は、戦後日本を代表する写真家の一人、須田一政の作品展を開催する。
須田一政は、日常に潜む異質な世界をとらえたスナップ作品により国際的に高く評価されている写真家だ。
初期の代表作「風姿花伝」をはじめ、カメラを通して事物を即物的、神秘的に探求する写真表現は、見る者に強烈なインパクトを与え、2019年に作家が世を去った後も、国内外を問わず、写真展の開催や写真集の出版が相次ぎ、現在も再評価の機運が広がっている。
本展では、フジフイルム スクエアの前身にあたる富士フォトサロン(東京・銀座)において、1986年に開催された須田一政の写真展「日本の風景・余白の街で」から約30点を厳選し、新たに制作したカラープリントで展示する。
同シリーズは、6×6cm判カメラでカラーポジフィルムを用い、1982年から1986年にかけて、地元である東京・神田周辺から上野、浅草、さらに、軽井沢、箱根など、日本各地で奇妙な光景をとらえた須田の知られざる傑作だ。開催当時、須田は写真展に寄せ、次のような文章を残している。
- 時として、風景としての機能が固定化してしまった東京を離れ、気ままに旅をする。見知らぬ土地、美しい景観、荘厳な歴史建築。しかし、その足をつかむのは絶えず私と向いあっているありふれた光景である。自らの周辺におこり得る刹那的な特殊空間が、突然うかび上ってくる。
旅上、一種の迫力をもって歪曲し現出する日常は、生々しい鋭さで私の目前をかすり、既存風景への視線をさえぎろうとする。
名所、観光地と呼ばれる佳景を「ひかり」とするならば、その平面上に在る日常という「かげ」の存在の状態が私の原風景なのかもしれない。
須田がレンズを通し、それぞれの場所で見ていたものは、当たり前な美しい風景ではなく、いわばその「余白」へと押し出された、何気ない光景や瞬間だった。
しかし、須田の眼によって切りとられた画面は、見慣れたものの裏側や、その奥に潜む本性を暴くような緊張感に満ち、同時に、個人的な視覚体験を表現する写真の本質を明らかにしている。
四六時中、写真のことを考え、撮り続けていた須田は、片時もカメラを手離すことなく街を歩き、無遠慮に、まるで脊髄反射のごとくシャッターを切り続けた。その有り様は、もはや職業としての写真家の姿ではなく、写真に取り憑かれ、身体ごとカメラに化した「人間写真機」さながらだった。
- ■展示概要
フジフイルム スクエア 写真歴史博物館 企画写真展
人間写真機・須田一政 作品展「日本の風景・余白の街で」
開催期間:2022年9月29日(木)~12月28日(水)
開館時間:10時〜19時(最終日は16時まで、入館は終了10分前まで) 会期中無休
会場:FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア) 写真歴史博物館
入館料 :無料
作品点数:約30点(予定)
主催:富士フイルム株式会社
監修:SUDA ISSEI Works
企画:フォトクラシック
後援:港区教育委員会
【写真家プロフィール】
須田 一政 (すだ いっせい/1940–2019)
1940年、東京・神田に生まれる。1962年、東京綜合写真専門学校卒業。1967年から1970年まで、寺山修司主宰の演劇実験室「天井桟敷」の専属カメラマンとして活動。1971年、フリーランスとなる。
1976年、「風姿花伝」により日本写真協会新人賞受賞。1983年、写真展「物草拾遺」等により日本写真協会年度賞受賞。1985年、「日常の断片」等により第1回東川賞国内作家賞受賞。1997年、写真集『人間の記憶』(クレオ、1996年)により第16回土門拳賞受賞。2001年から2013年までワークショップ「須田一政塾」を主宰。2014年、日本写真協会作家賞受賞。2019年、逝去(享年78)。
同年、写真集『日常の断片』(青幻舎、2018年)により第31回写真の会賞特別賞受賞。没後も写真展開催や写真集出版が相次ぎ、国内外で再評価の機運が広がっている。
【関連リンク】
https://fujifilmsquare.jp/exhibition/220929_05.html
出展者 | 須田一政 |
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会期 | 2022年9月29日(木)~12月28日(水) |
会場名 | フジフイルム スクエア |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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