『干潟にて』は、新山清(1911年〜1969年)が故郷・愛媛の今出海岸で撮影した作品群。
戦後暫く帰郷していた新山は、或る日そこで自然物と気候が生みだした不思議な干潟の光景に出会う。その日の潮が満ちるまでの数時間の内に撮影することができたのは20数枚のネガフィルムだけで、新山はその後も幾度となく今出海岸へ足を運んだが、そのような光景には二度と出会うことができなかった。
写真集には、そのネガから新山自身が仕上げたヴィンテージプリント15点を収録。主観主義写真として評価される新山のグラフィカルな感性による画角や構成、そして当時の写真における時代背景なども窺い知れる一冊となった。現在は埋め立てられてしまい姿を変えた今出海岸の当時の様子や、気候としても珍しい現象の資料ともなりうる貴重な作品群ともいえるだろう。
写真から溢れてくる当時の海の自然物の豊かさ、それを目の当たりにした新山の喜び。それは誰しもが味わったことのある原体験的な感情を揺さぶる。
- 『干潟にて』
2022年9月刊行
275mm×355mm(A3変形)/ハードカバー/40p/表紙·箔押し/ダブルトーン+グロスニス- 5,500円(税込)
著者:新山清
デザイン:齋藤基正(NUUMOON.)
編集:齋藤基正(NUUMOON.)/太田京子
寄稿:篠田優(写真家)
翻訳:太田京子/David Felix
協力:新山洋一
印刷·製本:三永印刷株式会社
発行人:太田京子
発行:キンカンパブリッシング
【写真家プロフィール】
新山 清(にいやま・きよし)
1911年愛媛県生まれ。東京電気専門学校卒業。1935年に理化学研究所に入社。1936年、パーレットカメラ同人会のメンバーとして写真家活動を開始し、作品を多くのサロンや国際的写真雑誌に発表。ロンドン・パリのサロンで数点が入選、雑誌アメリカン・ポピュラーフォトグラフィー、フォトモンドのコンテストに入選。その後、全日本写真連盟や東京写真研究会での活動を通して日本のアマチュア写真家育成に携わる。1958年に旭光学に入社し、東京サービスセンター所長に就任。1969年5月逝去。1950年代に“Subjektive Fotografie”(主観主義写真)を提唱したドイツ人写真家のオットー・シュタイナートによって広く世界に知らしめられ、現在も国内外で評価されている。
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