top コラム推すぜ!ニコンSシステム第5回 限定2500台、ブラックのみで復刻した、 「ニコンSP LIMITED EDITION」

推すぜ!ニコンSシステム

第5回 限定2500台、ブラックのみで復刻した、
「ニコンSP LIMITED EDITION」

2023/11/09
赤城耕一

ニコンSPに多種類のファインダーを内蔵させたのは、多機能をうたうということもあるのでしょうが、交換レンズも買ってねということもあったかも。ここではマイクロニッコール5cm F3.5を装着してみました。レンズ単体ではマクロ領域は撮れないけど、よく写ります。

 

もう一度、ニコンSPの話を書きますかね。しつこいよね。歳食うと粘着になるのでしょうか、これは昔からか。いちおう復刻S3に続いて出た復刻SPですからね、無視しちゃいかんかなと思い始め、こちらも取り上げることにしました。登場したのは2005年で、限定製造台数2500台とのことです。
 

とはいえ、追加で詳しくお話しすることはそうないのですが、復刻S3の取材に行ったときに確かニコンの方に聞いたんですよね、「なぜSPを選ばないんですか?」と。
 

答えは、ボディはともかくファインダーを甦らせるのは難しいからと」
 

素人がみてもそれは難しそうでした。実像式の見やすいファインダー、パララックス補正可能な多種類のブライトフレームの内蔵、広角系のファインダーも別立てで作らねばならないからです。
 

ニコンSPは50、85、105、135mmのフレームと距離計のあるほうがメインのファインダーであり、これがSPを語る全てなんじゃないかと思います。

 


シリアル番号は4桁しかないです。なんか寂しいですね。いかにもパチもの、じゃない復刻モデルという感じがします。2500番がラストなのかしら。この個体は389番目の製造ってことかなあ。

 

Sシリーズ唯一のパララックス自動補正も可能にしておりましたし。正直なところ28と35mmの広角側ファインダーのほうはオマケみたいなものでありました。ファインダー倍率も小さく、井戸の底を覗く感じです。もちろんあるものは使わないともったいないわけですけど。
 

広角側のファインダーに距離計は内蔵されていませんから、仮に正確なフォーカシングをすることを考えるならば、スクリューマウントライカのように、フレーミングとフォーカシングはそれぞれの別のファインダーにて行わなければなりません。
 

レンジファインダーカメラで広角系レンズを使うことを考えるならば、目測設定の撮影をするのが常識という時代ですから、あまり神経質になる必要はなく、のぞき窓的に考えてもいいのかもしれません、でも現代人の筆者(笑)としては少し辛いところもあります。
 

ただ、この時代のSマウントニッコールって、feet表示のみのものが多いので慌てて撮影すると距離設定を見間違えてしまうようなことがあります。復刻SPのヘリコイド部分はm表示ですね。これオリジナルのSPでは少ないと思います。 
 

復刻SPに用意されたレンズはニッコール35mmF1.8です。キットレンズですね。本レンズを使う場合は前記のとおりフレーミングとフォーカシングをぞれぞれのファインダーで行わなければならないので正直不便です。ただ、このレンズもフォーカスリングの表示はmですから、feet表記よりもはるかに使いやすかったことは確かです。

 


マウント部分です。コンタックス形式です。m表記なのが新鮮ですね。往時のSシリーズの商売は北米が多かったですかねえ。feet表示が多いですね。

 

ニコンSシリーズのことをまったく知らずして、復刻SPを購入するような人は少ないとおもいますが、筆者から言わせれば、復刻ニコンSPには50mm F1.4を、S3には35mm F1.8を用意するのがスジではないかと思うわけです。
 

復刻SPはブラックボディボディのみです。少し光沢が強い印象ですが、その仕上げはなかなかのものでした。しかもファインダーの見え方には感激いたしました。最新のコーティングが施されているからでしょうか、とてもクリアで見やすいものになっていました。各種ブライトフレームの色も鮮やかにみえました。撮影するより、フレームを切り替えているほうが楽しいくらいでした。
 

広角側のファインダーはあいかわらずですが、オリジナルのSPのそれは、ほとんどが曇っており、ただでさえ見にくいものがさらに見にくくなっていましたので、復刻SPの広角側ファインダーを覗いたときのクリアさにもびっくりしました。ただ、倍率はオリジナルと同じですから本当に使いやすいかどうかはまた別の話であります。

 


ボディ右袖に関してはS3とほとんど同じではないかと。せっかくS3用に作ったんだからもうちょい頑張ってSPも復刻して商売にしようという目論見があったのかなかったのか。

 

シャッターは布幕ですから、動作音は小さく、よい感じです。メカ部分はほぼ復刻S3と同じですから、この機構を生かし切っているようです。
 

復刻S3発売のあと、程なくしてSPも復刻されるという噂が流れました。これはリーク情報だったのかもしれません。
 

筆者は『アサヒカメラ』の依頼で山形にある土門拳写真美術館に赴き、土門拳が愛用したニコンSPをブツ撮影しました。復刻に合わせて表紙に使おうという企画によるものです。土門拳のSPはブラックボディで、ニッコール8.5cm F1.5が装着されていました。
 

そのままでは画面内での収まりが悪いので側にあった3.5cm F2.5に換えて撮影した記憶があります。ただ、ニコンSPが復刻登場する気配はこの時はまだなかったんじゃないかなあと思います。実際のところどうだったんでしょうか。

 


フォーカシングギアです。指の腹の皮が剥けそうです。復刻のS3もSPもグリースをケチったような動作感触なんでメンテ出して滑らかな動きにしたいなあと。

 

復刻SPはS3のようにミレニアム記念など意味があって企画されたものではありませんから、登場は唐突な感じもしましたが、復刻プロジェクトをやり切った感じが強くしました。
 

フルメカニカルのカメラだから可能にしたのだろうと、口で言うのは容易いのですが、実際にはたいへんな苦労があったことかと想像できます。携わられた関係者のみなさま、ごくろうさまでした。

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する