top 本と展示展覧会ピックアップ岡崎正人写真展『「掌の残像」不確かな希望』がギャラリー冬青で開催

岡崎正人写真展『「掌の残像」不確かな希望』がギャラリー冬青で開催

2022/06/27

岡崎正人写真展『「掌の残像」不確かな希望』がギャラリー冬青で開催される。
以下、作者による作品紹介。
 

最初にフィルムがあった。
それは大きなレントゲン用のシートフィルムで、ずいぶん昔に、期限切れの廃棄品を譲り受けたものだ。
 
何度か引っ越しても捨てられずにいて、十数年前に今の家に移ってからは暗室の隅に保管。
箱に書かれた使用期限は1980年頃だから、普通に考えればゴミである。
一度、思い立ってベランダでテスト撮影しようとしたら、コードノッチがない、、
その一枚を明室で確認してみると、、、裏表が同じだ。
後から知ったのだが、レントゲンのフィルムには、両面に乳剤を塗って、裏表なく使用するものがあるようだ。
 
気を取り直して、4x5インチにカット、ベランダから撮ると、ぼんやりと写った。
その時のカブリ濃度は1.0くらい。コンタクトなら、プリントできそうなネガであった。
ああ、使えるじゃないかと気が緩んで、それからまた10年が過ぎた。
 
このフィルムで本格的に写真を撮り始めたのは自粛ムードの2年前だ。
フィルムの箱には Panorama Dental X-ray film の文字、、、
歯科医用のレントゲンのパノラマであるから、顎全体を撮影するフィルムのように思われる。
フィルムのサイズは30cmx15cm、四つ切の印画紙の下を切り落とした横長で、
ピンホールカメラを作れば、べた焼きでプリントになるサイズだ。
 
最初のカメラは、粗大ごみに捨てられていた、インテリア用のオイル缶だった。
スツールになるほどの大きさであるから、一枚撮るとフィルムの交換に暗室に戻らなければならない。
それだけならよいが、、、その大きさと、ボロい外見ゆえに、
海岸で露光中のカメラが、ゴミの不法投棄と間違えられて警察に通報されるというトラブルがあった(笑)
 
カメラらしい?外観は重要で、新品のペンキ缶を購入し、三脚も付くようにした。
やや小ぶりになって、フィルム交換は車内のダークテントでできるようになり、
一日に数枚と、スローペースではあるが、自宅の周辺で撮影するようになったのである。
 
写り具合はと言うと、10年前のカブリ濃度は1.0ぐらいだったが、
新たに試してみると、未露光でも2.0近くある。
露光しなくても真っ黒なネガ、撮影すると、真っ黒のネガの中にぼんやりと何かが写る。
 
いろいろと改良はしたが、40年前のレントゲンフィルム、どんなに頑張ってもちゃんとは写らない。
それが魅力?となって、毎日撮影を続けて、1年で300枚のフィルムを使いきってしまった。
 
撮影地は、自宅のある房総半島周辺、自粛真っ只中であるから遠くにはいけない。
海沿いに足を伸ばして茨城までだ。
 
カメラはペンキの缶のピンホール、ファインダーは無いが、改良を重ねて100度近い画角がある。
太陽は反転し、ぼやけた空に雲は流れる。
私には見慣れた場所ではあるが、仕上がったプリントは別の惑星のようだ。

 

【展示概要】
会期:2022年7月1日(金)〜7月30日(土)
11:00〜19:00  日曜・月曜・祝日休廊 入場無料
最寄り駅:東京メトロ丸ノ内線 新中野駅徒歩5分
展示:シルバーゼラチン・コンタクトプリント 27点
 
【写真家プロフィール】
岡崎正人(おかざき・まさと)
 
1959年高知県生まれ
1978年より日本大学芸術学部写真学科で写真を学び、同芸術研究所を経て
1985年より本格的に作家活動を開始する。
 
主な個展
1986年 東京銀座コダックフォトサロン「泥影」(DEIEI)
1986年  大阪コダックフォトサロン「泥影」(DEIEI)
1988年 東京銀座コンタックスフォトサロン「エア」
1996年 東京渋谷Eggギャラリー「耽象の時Part 1」
1998年 横浜ギャラリークレイドル「ZONE」
1999年 横浜ギャラリークレイドル「ノスタルジア」
2002年 東京広尾テアトル・デ・ソンス ギャラリー「ZONE2」
2005年  NY. FOTOSPHERE GALLERY「MASATO OKAZAKI PHOTOGRAPHY」
2006年 NY. FOTOSPHERE GALLERY「MASATO OKAZAKI PHOTOGRAPHY」
2011年 東京ギャラリーバウハウス「水の呼吸」
2012年 東京ギャラリーE&M NISHIAZABU
2015年 東京ギャラリーバウハウス「光に出遭う旅」
2018年 東京ギャラリーバウハウス「etude北国のための習作」

 

【関連リンク】

http://www.tosei-sha.jp/

展覧会概要

出展者 岡崎正人
会期 2022年7月1日(金)〜7月30日(土)
会場名 ギャラリー冬青

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

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