Photo & Culture, Tokyo
コラム
top 本と展示展覧会ピックアップ大阪中之島美術館で「拡⼤するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」が開催

大阪中之島美術館で「拡⼤するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」が開催

2025/12/07

ルネ・マグリット《王様の美術館》 1966年 横浜美術館

 

大阪中之島美術館で「拡⼤するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」が開催される。
 
シュルレアリスム(超現実主義)は1924年にアンドレ・ブルトンが定義づけた動向で、「これまで無視されてきたような種々の連想における高次のリアリティと、夢の全能性への信頼に基づく」ものとされている。無意識や夢に着目したフロイトの精神分析学に影響を受けて発生した。幻想的雰囲気、日常的事物を覆う不穏な空気、オートマティスムなど、シュルレアリスムにおける表現の形態に一定の傾向を見出すことも可能だが、シュルレアリスムとは表現の様式をいうものではなく、前述の「高次のリアリティと、夢の全能性」への信頼に基づいた、あらゆる創造行為をさすものだ。芸術的革命をもたらしたシュルレアリスムは共産主義やアナーキズムなど政治的要素をも内包する一方で、広告やファッション、インテリアなど日常に密接した場面にも拡がりをみせ、社会に対して政治、日常の両面からアプローチしたといえる。
 
シュルレアリスムが芸術のみならず社会全体に影響をもたらしたことは今日においてもなお特筆に値するものである。シュルレアリスムの発生から約100年を経た今、本展覧会は日本国内に所蔵されている多様なジャンルの優品を一堂に会し、シュルレアリスムの本質に迫る。圧倒的存在感をもって視覚芸術、ひいては社会全体へと拡大したシュルレアリスムを、表現の媒体をキーワードとして解体し、シュルレアリスム像の再構築をめざす。

 

第1章 オブジェ―「客観」と「超現実」の関係

シュルレアリスム、それは私たちが疑う余地なく現実だと認識しているものの中から、より上位の現実である「超現実」を露呈させることだ。客体(=objet[仏]/オブジェ)として事象をみつめることで「超現実」と向き合ったシュルレアリストたちのオブジェにより、シュルレアリスムの扉を開く。

アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』(初版本)
1924年 岡崎市美術博物館

フランシス・ピカビア《黄あげは》
1926年 大阪中之島美術館

 

第2章 絵画―視覚芸術の新たな扉

「自動筆記」(オートマティスム)という文学的な実験に由来するシュルレアリスムは、長い伝統をもつ絵画の領域にも広がる。エルンスト、マグリット、デルヴォー、ダリなどはそれぞれの個性豊かな作風や技法を使って、人の深層心理や夢想を反映した不可思議な光景や人物像を描いた。

イヴ・タンギー《失われた鐘》
1929年 豊田市美術館

ルネ・マグリット《レディ・メイドの花束》
1957年 大阪中之島美術館

第3章 写真―変容するイメージ

19世紀前半に誕生した写真術は、被写体をそのまま写すという本来の役割を超えて、20世紀美術を彩る主要な表現のひとつになる。シュルレアリストは多様な技法を駆使して、日常的なモチーフを斬新で謎めいたイメージへと変えた。マン・レイを筆頭に、各国の芸術家が多彩な写真表現に取り組む。

ヴォルス《美しい肉片》
1939年 個人蔵

 

第4章 広告―「機能」する構成

本展覧会のテーマは「拡大するシュルレアリスム」。4章からは、オブジェ、写真、絵画といった芸術と呼ばれる領域から、さらに広く目を向ける。デペイズマンやコラージュ、フォトモンタージュなどシュルレアリスムにおいて多用されたテクニックを発揮した、訴求力に富んだ広告に注目する。

クルト・セリグマン《国際シュルレアリスム展》
1938年 サントリーポスターコレクション(大阪中之島美術館寄託) *後期展示

フリッツ・ビューラー《ポスター「ジオデュの帽子」》
1934年 宇都宮美術館 *後期展示

 

第5章 ファッション―欲望の喚起

シュルレアリスムは、モードやファッションと近接する場にあった。服飾そのものや服飾雑誌にシュルレアリスム的手法が用いられるとともに、服をまとうマネキンを身体のオブジェ化としてとらえるなど、シュルレアリストたちのインスピレーションの源ともなった。ファッション界とシュルレアリスムの関係を探る。

エルザ・スキャパレッリ《イヴニング・ドレス「サーカス・コレクション」》
1938年 島根県立石見美術館 *前期展示

ヴォルス《無題》
1937 / 1979年の再プリント 横浜美術館 *後期展示

 

第6章 インテリア―室内空間の変容

違和感を引き起こして現実に揺さぶりをかけるシュルレアリスムにとって、日常生活の場である室内の安定した秩序を転覆させることには大きな意味があった。室内に置かれる家具もまた、有機的な形態を特徴とする、奇妙なオブジェへと変貌します。シュルレアリスムによる空間への関与を提示する。
 

  • ■展覧会情報
    「拡⼤するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」
  • 会期:2025年12月13日(土)〜2026年3月8日(日)
  • [前期:12月13日(土)〜1月25日(日)/後期:1月27日(火)〜3月8日(日)]
  • 時間:10:00〜17:00(入場は16:30まで)
  • 休館日:月曜日、12/30(火)、12/31(水)、1/1(木・祝)、1/13(火)、2/24(火)
  • *1/12(月・祝)、2/23(月・祝)は開館
    会場:大阪中之島美術館
    住所:大阪府大阪市北区中之島4-3-1
    観覧料:一般:1800円(団体 1600円)/高大生:1500円(団体 1300円)/小中生:500円(団体 300円)

 

【関連リンク】
https://nakka-art.jp/exhibition-post/surrealism-2025/

展覧会概要

会期 2025年12月13日(土)〜2026年3月8日(日)
会場名 大阪中之島美術館

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する