1854年の創業以来、旅の真髄(こころ)を讃え、今もなおその冒険心を忠実に受け継いでいるルイ・ヴィトンから今秋、「パリ・フォト2025」の開催に合わせ、フォトブック「ファッション・アイ」コレクションの2つの新たなタイトルが登場する。
スウェーデンでは、ジュリア・ヘッタのポラロイド・スナップショットが、野生的でありながら親しみやすい自然を詩的な繊細さで表現。ラジャスタンでは、バハラ・シッカの写真とコラージュが、輝かしいエネルギーに満ちたこの国についての神話や固定観念に疑問を投げ掛ける。
旅の真髄(こころ)を表現するのにぴったりな「写真」というメディアは、ルイ·ヴィトンにとっても至極当然の表現形式だ。ルイ·ヴィトンにおいての編集プロセスは、フォトブック自体を独立したメディアとして確立させる。その目的は、フォトブックの視覚的語彙をさまざまな形で絶えず刷新すること。「ファッション·アイ」は、オーダーメイドのシリーズだ。使用される紙や装丁の種類、レイアウト、時には印刷工程までも、伝統ある職人技を駆使して、各編それぞれ異なる仕上げを施している。なぜなら本は、何よりもまず、著者、デザイナー、印刷業者の作品であるだ。
タイトルごとに大きく異なる視点が提示され、それは目的地によって変化する。そこでは、都会のパノラマ、自然の風景、地元の暮らしの1コマや、より静観的な作品が、カラーとモノクロの両方で描き出される。「ファッション·アイ」の各タイトルは、厳選された写真を大判で紹介すると共に、フォトグラファーの経歴と、彼らへのインタビューまたは批評的エッセイを収録。シリーズを通して交わされるのは、才能ある若手、経験豊富なフォトグファー、ファッション写真界のレジェンドたちによって繰り広げられるユニークな対話。現代のクリエーションを、あまり知られていない歴史的な遺産と対峙させ、アプローチと美の双方の観点から決定的な意味を持たせた写真集シリーズだ。
- 「ファッション·アイ」とは
- ・「スウェーデン」と「ラジャスタン」はパトリック·レミーが編集を担当
・フォトグラファーの経歴ならびにインタビュー、写真キャプションはフランス語、英語の2ヶ国語表記
・各タイトルにつき50-150枚の写真掲載
・サイズ:23.5×30.5cm(9.3×12.0in.)
・エンボス加工の布製カバーを用いたハードカバー
・テキストには1932年にパウル·レナーがデザインし、ライノタイプ社(ドイツ)がデジタル化して販売しているフォント、FuturaTを使用
・イタリアで印刷
・2025年11月よりルイ·ヴィトンストアおよび公式サイト louisvuitton.comにて、2025年11月7日(金)より一部書店にて販売
価格:6,820円(税込)
ルイ・ヴィトンエディションは、2025年11月13日(木)〜16日(日)までグラン·パレで開催される「パリ·フォト2025」に出展する。

■ファッション·アイ スウェーデン
低く、淡く、ほとんど消え入りそうな光。極北の光は魅惑的で、永遠に謎めいている。スウェーデン人フォトグラファージュリア·ヘッタが捉える室内のひとコマや静物、ポートレート、風景は、デンマーク人の画家ハンマースホイが追求したテーマの変奏曲。ヘッタ特有の抑制された色彩、ドアや窓、幻影、そして夢に満ちた簡素な構図に忠実でありながら、沈黙の画家ハンマースホイのように「優しくも劇的」であると同時に、「静寂でありながら強烈な雰囲気」を創り出す。ハンマースホイ同様、ヘッタは引き算によって本質に触れ、剥き出しの真実にまで削ぎ落とし、時間を凍結させる。広大なスカンジナビア王国全土で四季を通じて撮影されたヘッタのポラロイド写真は、シンプルで分かち合える喜び、木の葉や馴染みのある顔といったものの優雅さを記録。そして冬に自身のスタジオに籠もり捉えられた彼女自身の顔が、「個人的な日記」として、ヘッタの一連のスナップショットを締め括る。気温によって変化するスナップショットの「グラデーション」は、そこはかとなく漂う郷愁を増幅させ、露光時間は引き伸ばされて、歳月によって徐々にぼやけていく光景を固定する。苔と雪の絨毯、乱れた髪と小麦畑、波打つ水面、白樺林⋯⋯身体の断片や風景の破片を捉えた「極めて映画的なコラージュ」がプロットのない物語を構成し、気分のフリーズ(帯状装飾)さながら、蛇腹折りの形式で展開する。
■仕様
FaviniTree Free Bamboo Cream 120gに印刷
98ページ
ジュリア・ヘッタ
1972年、ストックホルム近郊のウプサラで生まれたジュリア・ヘッタは、地下に暗室のある家で育った。デッサンと絵画から芸術に取組みはじめ、次第にファッション写真と銀塩プリントへと転向。アムステルダムのヘリット・リートフェルト・アカデミーで学んだのち、ドキュメンタリー写真を専門に扱うエージェンシーの画像エディターとしてキャリアをスタートさせた。以来、彼女の魅惑的なスタイルは、自然光や素材の動き、長時間露光を主軸に進化を続けている。
彼女の視覚的ボキャブラリーは、儚さを特徴とする時代に抗うように、その写真に文学的な様相をもたらす。『Vanity Fair』、『Dazed』、『AnOther』といった雑誌や、アルマーニ、バレンシアガ、エルメスなどのファッションメゾンとの仕事を経て、数冊の書籍を出版。最初の2作、『Julia Hetta x 36』(2013年)と『OutofContext』(2016年)は、彼女のファッション観を網羅している。一方、『Island』(2023年)は、オーサ·ステナーハーグとの共同制作による、よりパーソナルな作品。またメトロポリタン美術館は、2023年の『Karl Lagerfeld: A Line of Beauty』展のために、カール·ラガーフェルドの作品と私物の姿を永遠に残すための撮影を彼女に依頼した。それ以外にヘッタは、ニューヨーク、ムンバイ、アムステルダムで展示を行い、SKPギャラリー(北京、西安)、フォトグラフィスカ(ストックホルム)、シュート·ギャラリー(オスロ)、OGATA Paris(パリ)で個展を開催している。




ファッション・アイ ラジャスタン
超現代的でありながら数千年の歴史を持つインドは、伝統に深く根付きながら、常にその姿を刷新している。

バハラ・シッカの視線は、コントラストに満ちたこの国に絶えず注がれ、人々の姿や習慣、都市のほんのわずかな変化も見逃さない。「王様の国」を意味するラジャスタンでは無駄になるものは何ひとつなく、すべてが変容し、あらゆるものが共存──プラスチックと布、スラム街と宮殿、象とモペット(原動機付き自転車)など──している。シッカは、こうした混沌の中で自分の道を徐々に切り拓き、師であるラグビール·シン(1942-1999年)と同様、色彩で作品を制作するという「意図的な選択」を行う。
スパイスを想わせるその色調は、エドワード・ホッパーの受動的なキャンバスが備える「静かな強烈さ」を帯び、単に「描写」するよりも「再発明」することに重きを置き、同じ「物語」性を積極的に探求。寺院から聖なる湖、凧から人形、ヨガ行者から露天商まで、シッカは、現場や儀式、キャラクターの尽きることのないパレードを写し出す。とはいえシッカの芸術は、馴染みのある民俗伝承や、異国情緒の「偏った視点」に「対峙」し、むしろ、フィリップ=ロルカ・ディコルシアの「本物でありながら演出された」アプローチを採用して、シネマ·ヴェリテのレンズを通して捉える。影は彼の街頭のシーンの枠を超えて神秘性を深め、フィクションが捉えどころなく染み込む。遊び心溢れるコラージュでは、さまざまなアーカイヴやドローイング、テクスチャーが画像に重ね合わさり、より効果的に「表象の脱構築」を図っている。
■仕様
Magno Volume 115g、FreelifeKendo White 120gに印刷
126ページ
バハラ・シッカ
1973年5月、インド最南部のタミルナードゥ州で生まれたシッカは、ニューデリーで育ち、そこで写真の実作をはじめた。ニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザインを修了以来ずっと、飽くことなく母国を隅々まで探求し続けている。驚異と日常を融合させる彼の視覚的な物語は、自らの経験を通じて触発された現実を再構築。その作品では色彩が重要な位置を占めているが、彼はそれをモノクロと組み合わせることに何の迷いもなく、それが、『Souvenir Shop』(スーパーラボ、2024年)における娘を連れた日本旅行や、『And Then』(Fw:Books、2024年)におけるケープタウン訪問を記録に残した時のように、自分自身と母国インドの間に新たな距離感を生むことへとつながっている。
その他の旅では、『Where the Flowers Still Grow』(Loose Joints、2017年)で激しい紛争地域カシミール地方を、『Indian Men』(Fw:Books、2023年)でインド全土の男性らしさとアイデンティティを、『Matter』シリーズ(2010–2013年)でグローバリゼーションを、『Coming Through in Waves』(2020年)で性とジェンダーを探求した。「パリ·フォト2023」の「Aperture PhotoBook Awards」で最終選考に残った『The Sapper』(Fw:Books、2022年)では、父親にオマージュを捧げている。バイレード、フェイスブック、ウェールズ·ボナーといったブランドからも注目されているほか、『The New York Times』、『i-D』、『Pleasure Garden』といった雑誌にも寄稿している。





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