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日本初開催、「SEEEU ヨーロッパ写真月間 2025」第一弾アーティスト発表

2025/09/03

KOI NIPPON/KOIは、「SEEEU(シー・イー・ユー) ヨーロッパ写真月間 2025」第一弾として参加アーティスト9組(8カ国)を発表した。「SEEEU ヨーロッパ写真月間2025」は、公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】および欧州連合(EU)の支援を受け、2025年10月23日(木)から11月23日(日)まで、東京都内各所の公共空間にて開催する。第二弾アーティストおよび会場情報は、9月中旬発信予定の第三弾プレスリリースにて告知する。

 

■駐日欧州連合特命全権大使 ジャン=エリック・パケ氏より開催に向けたメッセージ全文
「私たちは、東京で初めて開催される『ヨーロッパ写真月間東京2025(SEEEU)』を支援できることを大変光栄に思います。このユニークなプロジェクトは、欧州の写真家たちの視点を東京の街角に届け、慌ただしい日々を送る人々へ静かに思索するひとときをもたらします。変化し続ける社会とその課題、そして強靭性――こうした現代欧州の姿を映し出す写真が、文化的対話の機会をもたらすとともに、世界的な不確実性と変化の時代において、欧州と日本の相互理解を深める契機となることを願っています。」
ジャン=エリック・パケ(駐日欧州連合特命全権大使)

 

■今年のテーマは「Reframing Realities:現実の新たな輪郭」
「Reframing Realities:現実の新たな輪郭」は、現代のヨーロッパをかたちづくり、そして再解釈しようとする、多様な視点を捉え直す試みだ。テーマの背景にあるのは、活気に満ちたコミュニティや、メディアに囲まれた日常、そして変化し続けるアイデンティティ。そんな中、客観的・個人的・環境的・美的など様々な枠組みで捉える「現実」は、絶えず生まれ、消え、そしてまた描き直されている。
 
武力衝突、移民の流入、気候危機などに直面するヨーロッパにおいて、写真家たちは「記録」と「創造」のあいだを行き来するような表現に挑んでいる。自己演出、知らぬ間に施された加工、合成された美、そして失われていく生物多様性。そんな世界を生きる私たちに、現実について「その輪郭はどこにあるのか?」「誰の手によって描き直されるのか?」という問いを投げかける。
 
■「SEEEU(シー・イー・ユー)ヨーロッパ写真月間2025」参加アーティスト第一弾発表
フェスティバル・キュレーター太田睦子氏(IMA)とキム・ボスケ氏(FUTURES)による選定のもと、第一弾として、今回、参加アーティスト9組(8カ国)を発表した。


スイス出身タイヨ・オノラト&ニコ・クレブスは、2023年以降はそれぞれ個別の活動を展開しているが、本写真祭では共同制作最後のプロジェクト《Water Column》を展示。公共空間で大規模に展示をするのは日本初だ。リトアニアを代表するタダオ・チェルンは、ヨーロッパのビーチでくつろいでいる人を被写体に、デジタル監視社会の現代においてプライバシーは自らが作り出すものであると同時にそれが幻想に過ぎないことを表現。イタリア出身クラウディア・フジェッティは、鑑賞者に自然を能動的な存在として捉えるよう促す。一方、スペイン出身フランシスコ・ゴンサレス・カマチョは、観光によるジェントリフィケーション、廃棄物、環境の悪化といった課題に向き合う。セルビア出身イーゴル・シラー、ウクライナ出身ヴァルヴァラ・ウリク、ハンガリー出身アンナ・ティハニは、アイデンティティ、記憶、帰属感をテーマとした作品を発表する。
 
Taiyo Onorato & Nico Krebs タイヨ・オノラト&ニコ・クレブス
スイス出身。タイヨ・オノラト&ニコ・クレブスは、20年にわたり共同制作を行ってきた。彼らの作品は、MoMA PS1(ニューヨーク)、クンストハレ・マインツ(マインツ)、Foam(アムステルダム)など、世界各地のギャラリーや文化施設で個展として紹介されてきた。2023年以降は、それぞれ個別の活動を展開している。SEEEU 2025では、《Water Column》を発表。本作品は、2023年にEdition Patrick Frey(チューリッヒ)より出版された彼らの長期プロジェクト「Future」の最終章である。海洋科学者との協働によって制作されたこのシリーズは、科学的なイメージと想像的な介入を融合させ、サンゴ礁や深海生態系、実験的な水中風景など、印象的で思索を促すようなビジョンを提示しながら、探究心、環境の脆弱性、そして現実と虚構の境界の曖昧さについて考察する。

《Water Column, S1》2022

《Water Column, S2》2022

《Water Column, S3》2022


Claudia Fuggetti クラウディア・フジェッティ
イタリア出身。クラウディア・フジェッティは、デジタル文化と現代写真の領域を探求するビジュアル・アーティストである。アルル、コペンハーゲン、フォト・ロンドンなどの主要なフェスティバルで作品を発表してきた。日本の視覚文化と写真に影響を受けたフジェッティは、ミニマリズムと複雑性、自然とテクノロジーの両面を受け入れるその美学にインスピレーションを得ている。これは、彼女自身の制作に深く共鳴する視点であり、そこでは自然と人工が常に対話を続けている。SEEEU 2025では、《Metamorphosis》を発表する。本作品は、私たちが今まさに経験している変遷の時をテーマにしており、それは人間の生活だけでなく、より広い自然界にも影響を及ぼす。色彩、レイヤー、混合技法を用いて、彼女は現実と人工の間に浮遊するようなイメージを創出し、鑑賞者に自然を能動的な存在として捉えるよう促すとともに、美しさ、儚さ、喪失についての思索を誘う。

《Metamorphosis》2024

《Metamorphosis》2024

《Metamorphosis》2024


Francisco Gonzalez Camacho フランシスコ・ゴンサレス・カマチョ
スペイン出身。フランシスコ・ゴンザレス・カマチョは、フィンランドを拠点に活動するビジュアル・アーティストである。写真とグラフィック印刷を融合させた彼の作品は、物質性、移民、風景と自己のつながりといったテーマを探求する。SEEEU 2025では、《Reverting》を発表。本作品は、風景とイメージ制作との物質的な関係、またアイスランドにおける自然の客体化に焦点を当てている。写真と版画の素材実験を通じて融合させるこのプロジェクトは、理想化されたアイスランドの自然美のイメージを複雑にする、観光によるジェントリフィケーション、廃棄物、環境の悪化といった課題に向き合う。

《Reverting, Oasis》2024

《Reverting, Reverting》2024

《Reverting, Vik》 2024

 


Tamara Janes タマラ・ヤネス
スイス出身。タマラ・ヤネスは、ベルンを拠点に活動しており、アーカイブ、著作権、そして変化を続ける視覚文化に取り組んでいる。SEEEU 2025では、《Copyright Swap》を発表。このコンセプチュアルなプロジェクトは、ニューヨーク公共図書館のピクチャー・コレクションから自身が収集したスキャン画像をもとに制作された。Photoshopでこれらの画像をデジタル加工することで、ヤネスは著作権の境界を探り、「他者の画像が自分の創作になるのはいつか?」という問いを投げかける。著作権弁護士と協働しながら、各変更は信号機の色に例えた評価システムで検証され、「グリーンゾーン」に到達するには大幅な改変が必要であることが示される。この作品は、写真やアートにおける著作権の曖昧さを浮き彫りにしている。

《Copyright Swap #2》2023

NYPL Picture Collection Folder HAIR

Original by Joel Meyerowitz

《Copyright Swap #3》2023

NYPL Picture Collection Folder EYE GLASSES

Original by David Seymour

 

Tadao Cern タダオ・チェルン
リトアニア出身。タダオ・チェルンは、ヴィリニュスを拠点に活動するアーティストである。彼のプロジェクトは国際的に発表されており、ゴッホ美術館(アムステルダム)やサーチギャラリー(ロンドン)など著名な会場で展示されている。SEEEU 2025では、《Comfort Zone》を発表。本作品は、公共と私的な空間の曖昧な境界を探る概念的ドキュメンタリー写真である。ヨーロッパのビーチで被写体の知らないところから上空撮影された写真は、人々が極端に公共的な空間の中でも、個人的な儀式や習慣に没頭している映し出している。リラックスしている一方でその姿は丸出しで、親密でありながら周囲の目にさらされている──これらの写真は、自由な余暇の時間に潜む矛盾を浮き彫りにする。本作品は、デジタル監視社会の現代においてプライバシーは自らが作り出すものであると同時にそれが幻想に過ぎないことを表現している。

《Comfort Zone》2013

《Comfort Zone》2013

《Comfort Zone》2013

 


Igor Schiller イーゴル・シラー
セルビア出身。イーゴル・シラーは、アムステルダムを拠点に活動するアーティストであり、バルカン半島で育った経験や文化的アイデンティティ、記憶に着想を得て制作を行っている。2024年には、セルビアの若手ヴィジュアルアーティストとして最優秀に選ばれ、マンゲロス賞(Mangelos Award)を受賞した。SEEEU 2025では、《Familiar Characters》を発表する。本作品は、セルビアで制作された写真作品で、大人になったシラー自身が頭の片隅に忘れられた子ども時代の自分を巡る旅を描く。作品の中でシラーは記憶と夢を重ね合わせながら、いつも間にか失ってしまった魔法を蘇らせようと試みている。シラーにとって、幼少期の物理的・非物理的な痕跡は、自身を形作った文化を映し出す鏡でもある。本作品は、シラー自身の個人的な歴史を映し出すと同時に、人間の本質――神聖な(内なる)場所に立ち返り、それを守り抜きたいとの願い――についても問いかけている。

《Familiar Characters, Flower Field》2020-2023

《Familiar Characters, Bunnies》2020-2023

《Familiar Characters, Three Butterflies》2020-2023

《Familiar Characters, Harlequins》2020-2023

 

Christina Werner クリスティーナ・ヴェルナー
ドイツ出身。クリスティーナ・ヴェルナーは、国家・民族主義、文化的記憶、アイデンティティ政治(アイデンティティーに基づく政治的運動・主張)、そして表象をテーマに活動するヴィジュアル・アーティストである。SEEEU 2025では、《The Horses Are Coming》を発表。本作品では、国家社会主義時代において動物が象徴する意味が政治的戦略の一部としてどのように視覚・演出的に使われていたかを考察している。鷲、獅子、馬、そして牧羊犬といった動物たちは、サード・ライヒ(第三帝国:ナチス党の支配下にあったドイツ)で『力』、『純潔』、『秩序』の象徴として用いられた̶̶これらは今日においても同じ象徴的意味を持つ暗号的なコードとして使われているとヴェルナーは指摘する。コラージュという手法を通じ、ヴェルナーはこれらの歴史的イメージを切り取り、組み替えることで、今なお残るこれらのイデオロギー的象徴性の痕跡を可視化している。

《The Horses are Coming》 2024

《The Horses are Coming》2024

《The Horses are Coming》2024

 


Varvara Uhlik ヴァルヴァラ・ウリク
ウクライナ出身。ヴァルヴァラ・ウリクは、ロンドンを拠点に活動するビジュアル・アーティストであり、写真、映像、インスタレーションを通じて、ポスト・ソビエトのアイデンティティ、記憶、世代間のトラウマを探求している。SEEEU 2025では、《Sunshine, How Are You?》を発表する。本作品は、記憶がどのように保存され、歪められ、再定義されていくのかを考察する。ソビエト連邦崩壊から5年後のウクライナ東部で生まれたウリクは、子ども時代の喜びの瞬間と、ソビエト的価値観の残響の狭間で育った。写真を通じて、彼女は過去の断片を解体・再構築し、それらを再文脈化することで、アイデンティティ、女性性、文化的遺産を再定義する。このシリーズは、内省的な思索であると同時に、世代の肖像でもあり、世代間のトラウマに向き合いながら、ロシアの植民地主義の影からウクライナのアイデンティティを取り戻す試みでもある。

《Sunshine, How Are You?》2023-2024

《Sunshine, How Are You?》2023-2024

《Sunshine, How Are You?》2023-2024

《Sunshine, How Are You?》2023-2024

 

Anna Tihanyi アンナ・ティハニ
ハンガリー出身。アンナ・ティハーニは、ブダペストを拠点に活動する美術写真家であり、映画的で物語性のある作品を通して、女性のアイデンティティと記憶を探求している。SEEEU 2025で、ティハーニは《Budapest A‒Z》を発表する。本作品では、子供時代の記憶や象徴的なイメージを手がかりに、今日のヨーロッパで変わりゆく文化や人々の現実を映し出すことでブダペストの新たな姿を描き出している。また、ハンガリーで広く愛されている子供向け百科事典『Ablak-Zsiráf(窓-キリン)』から着想を得たティハニは、人々に共通する記憶の断片と自らの記憶を重ね混ぜ合わせている。どこかで見つけた古い写真、記録資料や彼女自身の個人的な写真を使って作成されたアナログ・コラージュ
によってブダペストを「視覚的なアルファベット」として組み立てながら過ぎ去った時代に浮かび上がる人々の顔と物語を浮かび上がらせている。

《Budapest A -Z, Bubble》2022

《Budapest A -Z, Bubble》2022

 

■「SEEEU(シー・イー・ユー)ヨーロッパ写真月間 2025」とは
本写真祭は、2025年秋に東京で開催する、日本初のヨーロッパ写真月間。年に一度、約1 ヶ月にわたり、ヨーロッパの今を捉える写真家による作品が、東京の公共空間で展示される。また、毎年テーマを設け、写真を通してヨーロッパで今起きている出来事を見つめ、共に考える機会を創出する。ヨーロッパのアートを発信するプラットフォームであると同時に、ヨーロッパと日本の間に新たな交流を生み出し、国や文化、言語の枠を越えて、共に世界と向き合う対話の場を築いていく。
 

  • ■開催概要
    会期:2025年10月23日(木)から11月23日(日)
    会場:東京都内各所の公共空間
    入場料:無料
    主催:KOI NIPPON / KOI [Kultūrinės ir organizacinės idėjos]
    助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】、欧州連合
    メディアパートナー:IMA、Lula Japan、ENCOUNTER MAGAZINE、Photo & Culture, Tokyo、 The Eye of Photography
    協力:PRESS CAMP
    公式ウェブサイト:https://www.seeeu.jp/ja
    公式SNS:
    X https://x.com/seeeu_jp
    Instagram https://www.instagram.com/seeeu_jp/
    Facebook https://www.facebook.com/seeeu.jp/

 
【関連リンク】
https://www.seeeu.jp/ja

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