東京四谷のギャラリーヨクトで髙田浩平『蜘蛛と雨-揖斐川の河童-』が開催される。
私が中学生の時の記憶の話。
三月。霧雨の降る中、山の斜面を切り開いた薄暗い通学路をぬけると、いつもと違う揖斐川の姿が現れた。
霧に覆い隠された揖斐川は普段よりも妙に明るく感じ、河川敷にまばらに生える木々も下の方ほど白く、上の方がぽつぽつと見え隠れしているだけだった。十メートルほど先までの川面はかろうじて見えてはいるが、立体感を失っている。雨で水量の増えた川の音だけが揖斐川の大きさを伝えていた。
その風景に釘付けになり、岡島橋をいつもの倍以上の時間をかけて渡り家路についた。橋を渡り終える頃には霧は薄くなりだんだんと見慣れた揖斐川の姿に戻っていた。
今思えば子供特有の感受性が、揖斐川のわずかな違いを特別に見せていたのかもしれない。しかし揖斐川を特別に感じていたのは私だけだったのだろうか?
岐阜県西部にある揖斐川町では毎年「ありがとう花火」というお祭りが行われているが、以前は「かっぱ祭り」と呼ばれていた。川の安全祈願と恵みに感謝の願いが込められている。祭り会場でもあり私の通学路であった岡島山は、揖斐川の河童の話が伝わっている。昔から人々が見ていた揖斐川には何かあるのかもしれない。
「蜘蛛と雨」では揖斐川の風景、祭り、そこに暮らす人々を写すことで気配のような何かを浮かび上がらせようと試みている。
なお、本展覧会の企画は山崎弘義。
- ■展覧会情報
髙田浩平『蜘蛛と雨-揖斐川の河童-』
会期:2025年8月20日(水)〜8月30日(土)
時間:13:00〜19:00
休廊日:8月25日(月)
会場:ギャラリーヨクト
住所:東京都新宿区四谷4-10 ユニヴェールビル102
■プロフィール
髙田浩平(たかだ・こうへい)
1989年 岐阜県揖斐川町生まれ
2014年 日本写真芸術専門学校卒
2022年『蜘蛛と雨 - 揖斐川の河童-』full⇔empty(代田橋)
2023年『蜘蛛と雨 - 揖斐川の河童-』pieni onni(岐阜市)
【関連リンク】
https://galleryyoctohp4.wixsite.com/galleryyocto
出展者 | 髙田浩平 |
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会期 | 2025年8月20日(水)〜8月30日(土) |
会場名 | ギャラリーヨクト |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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