畑 祥雄「奇跡の森 EXPO‘70」©Yoshio Hata
大阪のThe Third Gallery Ayaで畑 祥雄「奇跡の森 EXPO‘70」が開催される。
1970年に万博が大阪で開催され、ちょうど55年後の来年にまた大阪で開かれることになっている。55年前に千里の山を切り拓く形で作られたその場所は、日本庭園と岡本太郎による太陽の塔と日本民芸館が当時の面影を伝えるのみだ。
今回、畑祥雄はパビリオンの跡地に人の手がはいって作られた「万博の森」を撮影した。55年の月日の中で育まれた多様な動植物たちの姿には目を見張る。人口の森がここまでになった理由の分析にも踏み込み、ドキュメンタリー写真の最新形といえるだろう。工業化社会の祭典である万博が55年を経て、都市に再生した森となったことは、複雑な現代を生きるわれわれにかろうじて未来の希望を感じさせてくれる。
■アーティストステートメント
1970年の「日本万博」は、戦後の焼けた廃墟から復興を遂げ、世界に経済大国として国の存在をに示した国家イベントであった。それは「人類の進歩と調和」をテーマに、最先端の科学技術を結集させ民族の平等を謳う祭典であった。
その象徴として輝いたパビリオン群は183日間の会期後ほぼ全て解体され、黄色い土の色がむき出しの更地になった。もともと、そこにはビジネスセンターを造成する構想だったが、豊かな自然の山々や里山を「開発」の名のもとに破壊し建造物で埋めていくという経済優先の「お祭り」に対し、世の中には批判や疑問の「雰囲気」が漂っていた。祭りのあとの贖罪意識も働き、博覧会閉幕後は自然の回復をテーマにした「森創り」が万博跡地で始まる。
以来約50年の時を経て、そのひ弱な人工の森は「鬱蒼とした森」「四季を愛でる森」「市民の憩いの森」へと成長・発展・変容した。一度は破壊された森が都市の中で人々の暮らしとともに再生されたことは世界でも類を見ない「奇跡」であり、「ネイチャーポジティブ(自然の保全と回復)」の先駆けでもある。
「森を守り、森を創る」は国連が掲げるSDGsの背骨にもなるアクションであるが、地球温暖化に伴う気候変動や生物多様性への危機など21世紀的な課題への取り組みが急務となっている現在、もはや森の保全だけでは追いつかない。森創りこそが自然全体を回復させ人類が美しい地球に調和するための条件であり、未来へと命をつないでいく方法である。
ただ、森創りは実現にも評価にも時間がかかる活動である。写真集『奇跡の森 EXPO 70』の発表が50年目の証として、自然の保全や回復のさまざまなプロジェクトに関わる人々に時代を超えて勇気をもたらすことができればと願う。
畑 祥雄
■展覧会情報
畑 祥雄「奇跡の森 EXPO‘70」
会期:2024年10月5日(土)~11月2日(土)
時間:12:00〜19:00(土曜日:17:00まで/火曜日:アポイントメントオンリー)
休廊日:日曜日、月曜日
会場:The Third Gallery Aya
住所:大阪市西区江戸堀1-8-24. 若狭ビル2F+4F
■トークイベント
登壇:畑 祥雄
日時:10月25日(金)19:30〜21:00
参加費:1,000円
会場:The Third Gallery Aya(定員:12名)+YouTube配信(後日、視聴可能)
予約先:06-6445-3557
■写真集の案内
畑 祥雄『奇跡の森 EXPO ’70』
発行日:2024年9月
判型:A4判・並製
頁数:144ページ
装幀:浅野豪
発行:ブレーンセンター
https://www.brainsharesystem.jp/sbcbook/html/products/detail.php?product_id=893
■プロフィール
畑 祥雄 (はた・よしお)
京都市出身の写真家・映像プロデューサー。同志社大学法学部で学び写真社会学を研究、個人の作家活動と文化プロジェクトのプロデューサー&ディレクターをしながら、京都の成安造形大学、関西学院大学の教授を歴任。現在、大阪国際メディア図書館館長を務め付属の写真表現大学・Eスクールの総合ディレクターをしている。日本写真家協会(JPS)会員、エンジン01文化戦略会議会員。
【関連リンク】
https://thethirdgalleryaya.com/exhibitions/hata-2024/
出展者 | 畑 祥雄 |
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会期 | 2024年10月5日(土)~11月2日(土) |
会場名 | The Third Gallery Aya |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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