top 本と展示展覧会ピックアップ千葉県市原市の市原湖畔美術館で「レイクサイドスペシフィック!―夏休みの美術館観察」が開催

千葉県市原市の市原湖畔美術館で「レイクサイドスペシフィック!―夏休みの美術館観察」が開催

2024/06/18

千葉県市原市にある市原湖畔美術館で「レイクサイドスペシフィック!―夏休みの美術館観察」が開催される。
 
東京から車で約1時間の里山にある市原湖畔美術館は、人工湖・高滝湖のほとりに開館した観光・文化施設「水と彫刻の丘」をリノベーションし、2013年に誕生した自然豊かな美術館。きらめく湖の3体の彫刻は、いつからここに? 地層のような外壁、緩やかなカーブを描き重なり合うコンクリート壁、行き止まりの道——バブル経済の真っただ中で設計され、バブル崩壊後に竣工した既存建物のあちこちには数々の謎が残されていた。本展では、その謎と戯れながら、5名のアーティストと共に美術館の観察を試みる。そして、建築空間・周辺環境から着想を得た作品や展開方法を「レイクサイドスペシフィック」と名付けた。

 

①美術館までの風景が彫刻に?
緩やかな弧を描く展示室に添うように建ち並ぶのは、森洋樹による木彫作品です。美術館までの道のりで目にした、山、森、川、湖、ダム、ビル、家などの自然物や人工物をモチーフに、一本の木を彫り出しながら「色」と「線」のみで風景を表現していきます。学部時代は建築を学び、大学院から彫刻専攻に転向した経歴を持つ森の風景の捉え方が色濃く表れた作品群は、私たちがいつも見ているものは何か、考えるきっかけを与えてくれることでしょう。
 
②美術館にふりそそぐ光
石田真澄は、時間の経過とともに刻々と変わる美術館や周辺環境の表情を“光を見つける”ことを通して発見していきます。本展のために撮り下ろされた新作のみで構成されるインスタレーションは、作家自身の視点を追体験させるような仕草で、自然光が差し込む展示室、屋上広場、外壁に展示されます。中学生の頃から独学で写真を始め、近年は「GINZA」や「POPEYE」などの雑誌、広告、写真集などで注目を集める石田にとって、美術館での発表は本展が初めての機会となります。
 
③美術館に“新たな導線”
光岡幸一は、建物にテープで文字を書く手法を用いて、美術館に“新たな導線”を作り、美術館で過ごす人々の認識や動きを少しずつ変えていきます。文字で表現されるのは「そこらへん」「あっち」「こっち」「あっちかも」など、正確な順路を示す言葉とは対照的な、曖昧なものばかりです。それらは館内外を散策するように設計され、時にその場に佇ませながら、一見何もないように思えた場所での楽しみ方をささやかに教えてくれます。
 
④クールな美術館を“ほんわか”させる
本展でトモトシが試みるのは、引越し業者が壁や床に傷がつかないように養生する技術を応用し、美術館建物の鋭角をやわらかく=ほんわかさせていくアクションです。会期中は、他の展示作品と共に、トモトシによる養生が館内各所に現れます。さらに、“ほんわか”させた部分にトモトシが強くぶつかるコミカルな映像作品も展示します。「建築や都市の完璧なデザインはありえない」というトモトシの考えが表れた、会期中のみの刹那的なリノベーションとも言えるでしょう。
 
⑤リノベーションの痕跡を可視化する
BIENは、約9メートルの吹き抜けに建物の骨組みを現出させ、建物の“形状”や“歴史”の解体/再構築を試みる新作インスタレーションを展開します。かつて、この空間を貫く梁と柱の向こう側は、湖底の世界を表現するための屋外水槽でした。しかし、水中彫刻を設置しようとつくられた水槽は一度も活用されることなく、遺構のように残されていたのです。展示室内に点在するBIENの遊び心ある仕掛けは、リノベーションの痕跡を可視化し、既存の梁と柱をフィクションと現実の境界線に置き換えていきます。
 
⑥30年の時を経て明らかになる、美術館の謎
遡ること30年、「水と彫刻の丘」には、とんでもない建築計画が存在していました。地下トンネル、空中デッキ、湖上の回廊……関連展示「学芸員の美術館観察」では、当館の30年余りの資料を掘り起こし明らかにしていくことで時代性を捉え、建築としての当館の魅力に迫ります。また、来館者にも美術館で発見したことを絵やことばで表現していただく「絵日記コーナー」も開設し、美術館を巡りながら、場所を発見していくことの楽しさを共有できる機会をつくります。

 

■出展作家
森洋樹、石田真澄、光岡幸一、トモトシ、BIEN
 
■展覧会情報
「レイクサイドスペシフィック!―夏休みの美術館観察」
会期:2024年7月20日(土)~9月23日(月)
時間:平日/10:00〜17:00 土曜・祝前日/9:30〜19:00 日曜・祝日/9:30〜18:00
最終入館は閉館時間 30 分前まで
休廊日: 月曜日(祝日の場合は翌平日)
会場:市原湖畔美術館
住所:千葉県市原市不入75-1
料金:一般:1,000(800)円 / 大高生・65歳以上:800(600)円
*()内は20名以上の団体料金。
*中学生以下無料・障がい者手帳をお持ちの方(または障害者手帳アプリ「ミライロID 」提示)とその介添者(1名)は無料
*支払いは現金のみとなります。
 
【関連リンク】
https://lsm-ichihara.jp/exhibition/lakesidespecific/

展覧会概要

出展者 「レイクサイドスペシフィック!―夏休みの美術館観察」
会期 2024年7月20日(土)~9月23日(月)
会場名 市原湖畔美術館

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

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