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【訃報】武田花さん、2024年4月30日逝去。享年72

2024/05/27

2024年4月30日、写真家の武田花さんが甲状腺疾患のため亡くなった。享年72。
 
1951年東京生まれ。父は小説家・中国文学者の武田泰淳、母はエッセイストの武田百合子。子供の頃、父親が部屋に籠もっているため、何の仕事をしているのかしばらくわからなかったという。写真との出会いは高校卒業を機に父からカメラをプレゼントされたことからだった。大学卒業後、アルバイトをしながら野良猫の写真を撮り続け、1980年に初の写真集『猫町横丁 駄猫・雑猫グラフィティー』(イザラ書房刊)を出版する。その後も野良猫を中心に写真を撮り続け、あわせてエッセイも執筆するようにもなった。
 
1990年に「眠そうな町」で第15回木村伊兵衛写真賞を受賞。女性としては第4回受賞者の石内都以来となる。受賞作は写真集『眠そうな町』(IPC刊)としてまとめられた。北関東の郊外を中心に撮影されたモノクロのスナップ写真だが、本作では猫が出てこない。人気のない町中をさながら自身が野良猫のように歩きながらスナップしている趣きである。いまでは本作のようなストレートで良質なスナップ写真が受賞することはないだろう。
 
とはいえ、武田花といえば猫の写真だ。フォトエッセイの体裁で多くの書籍を刊行し、たくさんのファンを得ていた。他の写真家は知らなくても、猫の写真を撮る武田花さんは知っている、という猫好きな人も珍しくない。
 
一方で文学者である父・武田泰淳と、泰淳亡き後にエッセイストとして活躍した母・百合子という個性的な両親を持ち、武田百合子のエッセイ集『遊覧日記』(中央公論新社刊)では写真を提供し、2017年には『あの頃 単行本未収録エッセイ集』(中央公論新社刊)を編集している。泰淳、百合子ともに猫好きだったらしく、ふたりが猫を愛でる写真もいくつかある。
 
武田泰淳は太平洋戦争時に徴兵され、中国へと派兵された。戦後になって彼の書く作品には主題の直接、間接を問わず、戦争体験の影響が随所に感じられる。単純に比較はできないが、武田花が野良猫を撮り続けた時代は、戦後もっとも幸福な日々だったのかもしれない。

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