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東京・麻布のCaleで矢島陽介「anonymous works」が開催

2024/05/17

東京麻布のCaleで矢島陽介「anonymous works」が開催される。
 
本作は事前に撮影した写真を引き伸ばし、それを背景として顔の映らない後ろ姿の人物をプリントの前に立たせて撮影するという手法をとっている。
 
背景のプリントは天地が正しいとは限らず、人物を選ぶ基準は設けず、要求するポーズにも特別な意味を持たせていない。それらの結果としてチグハグで奥行きのない構成写真が生み出されている。
 
矢島はこれらのシリーズの在り方として、写真評論家の港千尋氏が写真家・高梨豊氏の作品集「地名論」について記したテキスト「月の砂漠」内に記されている“インターネットと 携帯電話の普及によって「もはやどこにいても同じこと」という状態、つまり地名自体の無意味化が起きている”という一節に心を重ね合わせている。
 
更にコロナ禍を経て、“理性や知識では理解したつもり、安全だと判断したつもりだったものが、実は動物的カン、生物的反応としては拒絶していることに気がつかなかったりする。この頭でっかち(もしくは生存本能の欠如)になった脳と、身体とのズレ、誤解、認識不足、思い込みは、特に都市生活においてより顕著に表れている気がする。”と語っている。
 
地域の特性の希薄化、個人の匿名化に対して、身体または建築物の構造とそこに生じる力学を無効化する仕掛けを用いて、直接的ではなくイメージの創出という方法で向き合おうとしている。さらに、こうした関心ごとの根源には矢島自身の生まれ育った「片田舎の新興住宅地」という環境が少なからず影響していると言う。
 
1980年代初頭に生まれた世代が感じる環境と人、人と人の関係について考察と制作を続ける矢島の作品を見て、思考してみてほしい。
 
会場にて、若林恵(黒鳥社 コンテンツディレクター)と若山満大(東京ステーションギャラリー学芸員)による寄稿を掲載したハンドアウトを配布する。
 

  • ■プロフィール
    矢島陽介(やじま・ようすけ)
    1981年山梨県生まれ。2009年「1_WALL」入選以来、積極的にグループ展や個展などで作品を発表。2013、14、1年にはオランダ・ アムステルダムで毎年開催される「Unseen Dummy Award」で入賞。また、201年にはIMAプロジェクト主催「LUMIX MEETS BEYOND2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS #5」に出展。写真集『Ourselves / 1981』(2015年)を自費出版で刊行している。2024年内に本作の作品集を刊行予定。

 

■展覧会情報
矢島陽介「anonymous works」
会期:2024年5月17日(金)〜6月1日(土)
時間:12:00〜19:00 
休廊日:日曜日、月曜日、祝日
会場:Cale
住所:東京都港区東麻布3-4-6
 
【関連リンク】
https://blog.cale.jp

展覧会概要

出展者 矢島陽介
会期 2024年5月17日(金)〜6月1日(土)
会場名 Cale

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

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