石内 都「絹の夢-silk threaded memories」©Miyako Ishiuchi
第8回横浜トリエンナーレの関連企画「アートもりもり!」において、石内 都「絹の夢-silk threaded memories」が開催。
馬車道駅直上にある本町通りや弁天通りあたりには、横浜港開港を機にはじまった生糸貿易に携わる商人たちが数多く拠点を構えていた。本町通りに隣接して1926年に建てられた横浜生糸検査所およびその付属倉庫群(のちの帝蚕倉庫群)は、煉瓦造りが特徴的な当時の建物を復元(一部現存保存)し、現在は横浜第2合同庁舎およびKITANAKA BRICK & WHITEとして活用されている。
当時は関東甲信越の広いエリアでつくられた絹が一旦ここに集められ、横浜港から船で諸外国に運ばれていった。一時は横浜港から輸出物全体の80%を絹が占めるほど主要な輸出物となり、58万キロという世界一の生糸輸出量を打ち出して、横浜および日本の近代の礎を大きく築いた歴史があった。一方で、世界恐慌の煽りを受けて生糸が大暴落したり、関東大震災による被害を受け原三渓らの尽力でどうにか持ち堪えたりと、決して明るい時代だけではなかった歴史もある。
石内都の「絹の夢」で撮影されているのは主に「銘仙」と呼ばれる着物で、くず繭の糸を平織りした絣(かすり)の絹織物。横浜に運び込まれた高級な輸出用の絹とは対極的な、むしろその副産物であったとも言える。一方でそのデザインは、ヨーロッパの前衛的な動向を取り入れた斬新な柄物が多くみられ、日本の近代化を支えた女性たちの普段着として愛用されていた。
今回の展示では、この「絹の夢」のシリーズから銘仙の着物地と共に、繭や生糸、石内氏の生まれ故郷である群馬県の製紙工場など、絹が煌びやかな織物になる過程にもフォーカスし「絹の夢」から紡がれた空間を立ち現す。
石内 都
- 「絹のゆくえ」
- 絹をまとうことは日常的にほとんどなくなってしまった。絹そのものの存在は薄れるばかりである。日本の近代を支えた絹産業を担っていた町は、栄枯盛衰の歴史をたどっている。その中で群馬県に現在も稼働している絹の製糸工場と、屑まゆを製糸して化学染料で染め、平織した廉価な銘仙のきものの写真を、絹とゆかりのある横浜に展示します。
■展覧会情報
第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きている」アートもりもり!
石内 都「絹の夢-silk threaded memories」
会期:2024年3月15日(金)~6月9日(日)
時間:10:00〜18:00(入場は閉場の30分前まで)
休廊日:⽊曜⽇(4⽉4⽇、5⽉2⽇、6⽉6⽇を除く)
会場:みなとみらい線「馬車道駅」コンコース
【関連リンク】
https://www.yokohamatriennale.jp/2024/many-many-arts/3115
出展者 | 石内 都 |
---|---|
会期 | 2024年3月15日(金)~6月9日(日) |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。