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第21回 ワインダーが装着できなければ一眼レフにあらず……そんな時代に生まれた異色モデル「ニコマートELW」

2023/02/04
赤城耕一

みなさんこんにちは。「ニコマートとあそぼう」のじかんです。
このクソ寒い中、読者のみなさまにおかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
 

で、さっそくのお詫びなんですが、今回取り上げる1976年に登場したニコマートELWですね、これって、シルバークロームボディは存在したんでしたっけか?機材ロッカーを探しても出てこないんですが…。
調べるのも面倒なんで、もし存在した場合、筆者のニコマートのコンプリートが嘘だったことになってしまいます。となれば、早いところお詫びしておきますね。申し訳ありませんでした。

 

ニコマートELW+ワインダーAW-1+NEWニッコール24mm F2.8(Ai改)

いろいろと文句はあるのですが、ニコマートELWはAW-1を装着してもキレイな形をしているように思うのです。個人の感想です。こう感じた時点で筆者自身の病気が重いことがわかります。グリップとかないので持ちづらいです。

 


見分けがつかないELとELW。しかも公称2コマ/秒ってホント!?

 

すぐに気を取り直してニコマートELWの本題に入るわけですが、Wってのはワインダー(Winder)のことを示しているのではないかと。つまりは自動巻き上げ装置でありますね。これが装着できるニコマートELであると。デザインはELもELWもほとんど変わらないですね。金型代とか節約したかったんだろうなあ。
本体には「W」の文字がどこにもないんで、ベースカメラのニコマートELと見分けるの大変ですな。なんで刻印しなかったんだろう。まあどうでもいいようなことですけども。
 

それにしてもワインダーとモータードライブとどこが違うのかといえば巻上げのコマ速度なのかなあ。
往時のモータードライブはカタログなどではあたかも分解写真が撮れるのではという喧伝が繰り広げれられていましたけど、通常のMF一眼レフカメラならば速くても5コマ/秒くらいですからね、今なら笑える速度です。何の話をしているのかわからない人は正常です。
 

ワインダーの速度といえば1コマ/秒とか2コマ/秒とか。先にバラしてしまうと、このニコマートELW用に用意された専用のAW-1というワインダーはシャッターを切り、指がシャッターボタンから離れないと巻き上げ動作に入らないわけ。
公式なコマ速度って2コマ/秒と言われているようですが、到底そんなのは無理な感じです。シャッターボタンから素早く指を離す訓練とかすれば変わるかもしれませんが、みんなそんなにヒマではないと思いますし、そんなにシャッターボタンを押したり離したりを頻繁に行うと、ブレの心配が出てきますな。この仕様はニコンFやF2のモータードライブのS(シングル)設定を踏襲したのでしょうね。
 

シャッターボタン周りにある新しく設けられた電源スイッチですね。AW-1装着の時にも使います。装着しなくても機能するのですが、このスイッチ戻し忘れたらバッテリーが消耗してしまいます。AW-1非装着時は巻き上げレバーのスイッチを使いましょう。

 

ワインダーの有用性は、手持ち撮影時の“決め構図”保持力にアリ!

 

そもそもなぜニコマートELにワインダーをつけるモデルを出してきたのでしょうか。識者は1976年に登場するキヤノンAE-1があるからと話をしていたのを読んだ記憶がありますが。ELWも同年発売ですからねえ。キヤノンAE-1のキャッチフレーズは確か「連写一眼」でしたけど、ニコマートELWは先の述べたように、指を忙しく動かさないと連写、いや、連写もどきにならないわけです。当時のエンジニアの方、反省してください。

 

でもね当時ってワインダーが装着できなければ一眼レフカメラにあらずくらいな感じも確かにありました。慌てて作ったのかもしれないですね。なんせ、ライカだって1978年発売のM4-2でワインダーを用意しましたからねえ。
それにしても、そんな遅い使いづらいワインダーってニコマートELにつける必然性あるのかという論議が当然のごとく巻き起こりました。ええ、自分の親指のほうが巻き上げが早いぜ、というやつですね。いるんだよね、こういうの自慢するヤツ。
 

これ、必然かどうかは別として、ワインダーの有用性というのはコマ速度がどうのということではなくて、とくに手持ち撮影の場合、指でフィルムを巻き上げるとアイピースから目を離さなければならないし、巻き上げの動作でカメラの位置が変わってしまうことを防ぐことができることに意味があったからではないでしょうか。
 

つまり手持ち撮影ではワインダーを使うと、一度決定した構図がおおきくズレる心配をせずとも、続けて撮影できることにあるのではないかと筆者は勝手に考えており、このことを有用と思えば意味のあるアクセサリーではないかと思うわけです。しかしですね、このワインダーAW-1は単三形乾電池を6本も使用せねばなりません。文鎮みたいな形のワインダーは色気がなく、グリップもありません。使いづらいことはなはだしいのですが、ワインダーの動きを一度体験しないと、寝つきが悪くなる筆者ですから、ちゃんと装着して久しぶりに動作させてみました。
 

もうね、重たいことこの上なく、グリップもないから、非力な筆者の右手は攣りそうです。とくに縦位置撮影などの場合は死にたくなりますね。それに動作音がすごいです。
カシャッ、ザザーッという音のイメージです。使用の必然と申しましたが、時と場合によると書き直すことにしましょうかねえ。
 

 

AW-1とELW本体をカップリングさせるために電気接点と連動カムがあります単純ですね。凝っていませんが、AW-1使用時のシャッタースピード低速制限とかはないみたいです。本当か?いや面倒なんで調べてないだけです。実際に使う方は取り説を探してください。弊社では責任を持ちかねます。

 

 

ボディ単体使用時は巻き上げレバーのスイッチを使いましょう

 

で、もうワインダーを外してみました。そうしたら軽快です。ニコマートELが我が手に還ってきたのであります。あ、ニコマートELとELWの違いって、先のワインダー連動軸をカメラ底部に持っていること、シャッターボタンの周りにメインスイッチが付加されたことですね。あとファインダースクリーンがK型(マイクロスプリット)になっていますね。
 

ニコマートELの電源スイッチはニコン特有の巻き上げレバーでこれを予備角まで引き出すことでスイッチが入ります。ワインダーを使う場合は巻き上げレバーは使わないので、巻き上げレバーを引き出す必要はありません。ところが、このままでは予備角まで巻き上げレバーを引き出さないと電源が入らないことになります。
 

このためELWには巻き上げレバーを引き出さなくても済むように、シャッターボタン周りに新たに電源スイッチが設けられました。ただし、このスイッチをONにしたままだと、電池は消耗してしまいます。瑣末なことかもしれませんがELWを使うにあたり、きわめて重要な点となりますので、ボディ単体で使用する場合は巻き上げレバーのスイッチを使うようにしましょう。
 

ま、良い子はワインダーAW-1なんか中古カメラ店で探さずに、ニコマートELW単体で使用し、デキる写真家はワインダーなんか必要としないのさっ。という態度を周りに見せてあげましょう。誰にも気づかれないと思いますけどね。

 

単体でのワインダーAW-1です。色気ないですね。羊羹みたいですねえ。ボディと当たる上面にも貼り革がああります。意味あるのでしょうか。電源スイッチは背面にあるのですが、撮り忘れました。

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